税理士法人 良知 コラム

2018年3月 5日 月曜日

実践コラム『税務と財務』

『税務と財務』・・・税理士さんに財務も任せていると錯覚していませんか。

中小企業経営における優先事項は「営業」や「マネージメント」ですので、「税務」や「財務」について、深く意識する機会は殆どないと思います。何となく一括りで語られることの多い「税務」と「財務」ですが、実は明確に違います。そして、自社に「財務」の機能が備わっていないことを認識している企業様は、案外少ないと感じます。

先日ご相談に来られた社長様の談話です
・現在決算作業中であるが、ある不動産の取引について、銀行に見栄えの悪い会計処理をされた。
・税理士さんに処理方法の変更を依頼したが「出来ない」と言われた。
・「出来ないはずはない」と感じたため、複数の知人を頼って知恵をもらったところ、可能な処理であることが分かった。
・税理士さんにその結果をお伝えしたらようやく変更してもらえた。
・税理士さんをプロだと思って任せているが、なぜこのようなことを会社側が気にしなくてはならないのか?本来は税理士さんの方から提案してくるべきことではないのか?

当事務所にご相談に来られる社長様が必ず口にされるセリフは、「今の税理士さんは〇〇なアドバイスをくれない。」というものです。〇〇に入る内容は概ね財務に関することですが、当事務所では、「先生は何も間違っていませんよ。」といつもお答えしています。

税理士さんは、その名の通り税務のプロであり、今回の処理も税務上は全く正しい処理です。社長様が税理士さんに、税務面だけでなく財務面もコンサルティングしてほしいと依頼しているならば別ですが、そうでなければ税理士さんはしっかりと責務を果たしています。問題は、税理士さんに依頼しているのは税務面からのアドバイスであるにも関わらず、財務面も任せていると会社が錯覚してしまっていることです。

先述の社長様は鋭い感覚をお持ちでしたので、結果的に財務目線でも評価される決算処理を行うことが出来ましたが、財務面も見てもらっていると思いこんで、税務目線だけで作成された決算書を金融機関に提出されている企業様が殆どです。このことで不利な融資判定をされたケースもゼロではないはずです。

先述の社長様から、「税務と財務の違いは理解できたが、会社側に財務の知識もないのに今後はどのように対処すべきか?」とご質問がありました。

中堅企業以上には財務部長がいます。しかし、中小企業で財務に明るい人材を置いている企業は殆どありません。まさに、社長様のご質問こそが中小企業の抱える大きな課題です。銀行融資プランナー協会は、財務も任せていただける税理士事務所の「財務部長の代行サービス」をご用意しています。このサービスが財務の課題解決に貢献できると考えております。

〇銀行融資プランナー協会の正会員である当事務所は、『貴社の財務部長代行』を廉価でお引き受けいたします。

〇金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会の正会員事務所である当事務所にて承っております。お気軽にご相談下さい。
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2018年3月 3日 土曜日

実践コラム『事業計画の立て方』

『事業計画の立て方』・・・妄想の売上高を基準に投資計画を立ててはいけません。

現状よりも業績を拡大しようとする時や、何か新しい事業を始めようとする時、3年から5年先までの事業計画を立てることをおすすめします。但し、事業計画の立て方を間違えると、致命的なダメージを受ける可能性があります。本日は、正しい事業計画の立て方について解説します。

◆売上計画を最初に立ててはいけません。
計画を立てるとき、まずは売上の計画から立てる方が圧倒的に多いのではないでしょうか。しかし、計画の中で最も思い通りにいかないのが売上高です。思い通りにいかない売上高を基準にした計画に取り組むのは大変危険です。

例えば、初年度で5,000万円の売上高が見込めると計画したとします。5,000万円売れれば、原価を2,500万円、人件費を1,000万円、広告宣伝費を500万円かけても、計画上は1,000万円残ります。よって、計画通りに5,000万円の売上高を見込んだ仕入、人材雇用や広告宣伝を行うと・・・費用は計画通りだが、売上高は計画通りにいかず、たちまち資金繰りが逼迫する、という事態に陥ります。

◆投資をするからリターンがあります。
売上高は結果です。仕入、営業マンの雇用、設備の投入などが原因となって、売上高という結果が生まれます。損益計算書は、結果である売上高が先に来ていますので勘違いしがちですが、。実際は費用が先行し、後から売上が立ってきます。計画を立てる際に、「リターンがこれぐらい見込めるから、これだけ投資をしよう。」と考えるのではなく、「現実的に投資できる金額はこれぐらいだから、リターンはこれぐらい見込めるのではないか。」と考える方が現実的です。「投資をするからそれに見合ったリターンがある。」というシンプルな原理原則を忘れてはなりません。

◆いくら投資できるか?どこに投資すべきか?を考える。
計画を立てる時に最初に考えるべきことは、「自社はどれぐらいの金額を投資に回すことが出来るのか?」ということです。たとえ、3年目の売上高が10億円、費用が8億円で利益が2億円となる計画を立てても、8億円の費用を費やす実力が自社に備わっていなければ単なる空想です。資金調達力も含めて、資金をどこに投資すれば一番効率よく利益をあげられるか、について考えましょう。

◆具体的な計画の立て方
1.自社が投資可能な金額を把握する。
2.1の金額を、「何に」、「誰に」使えば最も有効かを考える。
3.1の金額を設備投資と6カ月程度の費用に振り分ける。
4.3の金額を費やした時、6カ月以内に損益分岐点売上高を達成出来るかどうかを検証する。
5.自信がなければ投資金額を小さくして損益分岐点を下げ、再度検証する。(繰り返し。)

妄想の売上計画から計画を立て始めるのではなく、現実的な投資可能額から計画を立て始めてください。致命的なダメージを受けるリスクが小さくなります。
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2018年3月 1日 木曜日

実践コラム(2)『10回払いの融資は本当に使えないのか?』

『10回払いの融資は本当に使えないのか?』・・・資金シュミレーションに基づいて判断しましょう。

金融機関から初めてプロパー融資の提案を受ける時にありがちなのは、返済期間10ヶ月などの超短期の融資です。金融機関の担当者は、「とりあえず実績を作ってもらわないと・・・」というセリフとともに提案を持ってきます。
先日もある社長様から、「1,000万円の10回払いの融資を提案されたが、使いようがないので断った方が良いですよね?」というご相談をお受けしました。そこで、本当に使いようがないのか、シュミレーションしてみました。
同社の取引条件は、即金で仕入れ、在庫として滞留している期間が最長1ヶ月、売上債権を回収するまでの期間が約1ヶ月となっています。粗利益率は約50%のビジネスです。

◆借入月の収支は以下となります。
入:借入金1,000万円
出:仕入500万円
差引:+500万円

◆翌月の収支は以下となります。
入:0万円
出:仕入500万円
出:借入金返済100万円
差引:-600万円

◆3か月から11か月後までの収支は以下となります。
入:売上回収金1,000万円
出:仕入500万円
出:営業経費支払い400万円
出:借入金返済100万円
差引:±0円

◆12ヵ月後からの収支は以下となります。
入:売上回収金1,000万円
出:仕入500万円
出:営業経費支払い400万円
差引:+100万円

1,000万円10回払いの融資を受けて、毎月500万円の仕入れを行い、営業経費を400万円かけて月商1,000万円の売上高を確保することができれば、毎月100万円を返済しながら、1年後には、年商ベースで1億2,000万円の売上増加、1,200万円の営業利益増加を実現できます。(概算のシュミレーションですので金利は考慮していません。)

もちろん思い通りに売上高が上がるとは限りませんので、慎重な判断が求められますが、無下にお断りする話でもなさそうです。直観的に結論を下すより、資金シュミレーションを実際にやってみてから判断した方が、正しい結論が導き出せそうです。
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2018年2月28日 水曜日

資金調達実践コラム『短期借入と長期借入について』

『短期借入と長期借入』について・・・それぞれの特徴と利用時の注意点を解説します。

借り入れには1年以内に返済期日の到来する短期借入と、返済期日が1年超の長期借入があります。運転資金の借り入れは短期借入で行うのが一般的でしたが、近年は運転資金の借り入れも長期で行うことが多くなっています。「長期運転資金」という名目です。

◆短期借入と長期借入の違い
短期借入と長期借入は、返済期間だけでなく、「返済原資」も違います。返済原資とは、返済に充てられる資金のことです。短期借入の返済原資は売掛金の回収金です。モノやサービスは売れたが、代金の回収までに時間を要する場合、その資金ギャップを埋めるために利用するのが短期借入です。よって、返済は回収した売上代金で行います。赤字の会社でも短期融資を受けられることがあるのは、返済原資が利益ではなく売上代金の回収金であるためです。

一方、長期借入の返済原資は利益と減価償却です。よって、赤字、かつ将来も利益が出る見込みがない場合は、返済原資がありませんので長期借入は困難です。

◆短期借入と長期借入のメリット・デメリット
短期借入の返済方法は期日一括返済であることが多く、期日に期限を延長してもらえるならば、ずっと返済をしなくても良いというメリットがあります。しかし、きじに期限を延長してもらえなかった場合は、まとまった返済資金を用意しなくてはならない点がリスクです。
長期運転資金は毎月一定の約定返済があるため、計画的に返済をしていくことが可能です。しかし、1000万円の資金ギャップを埋めるためには1000万円の借り入れをしても、約定返済分は資金が不足しますので、実際に必要な金額よりも余分に借りなくてはならないという点がデメリットです。

◆短期と長期どちらで調達を行うべきか
資金繰りの観点から考えると、毎月発生する資金ギャップ(経常運転資金)は約定返済のない短期借入で調達し、利益は返済に回さずにキャッシュを積み上げることで資金繰りは安定します。投資回収に長い年月を要する設備投資や、更なる売上拡大に挑戦するための運転資金(増加運転資金)は、利益が出るまでに時間を要するため、長期借入で調達した方が資金繰りは安定します。

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2018年2月27日 火曜日

『金融機関対応・資金調達Q&A(その6)

Q12:「リスケジュールの交渉中だが、直近に借り入れた銀行分だけは、返済額も少ないので返済を続けようと考えていたが、他の金融機関が強硬に反対してきた。ダメなのか?」

A12:
数か月前に融資を受けたばかりの金融機関にリスケジュールの相談をしたら、厳しい口調で叱責されたそうです。であるならば、その金融機関に対しては返済を続けて、他の金融機関にはリスケジュールをお願いしようと他の金融機関に相談したら、他の金融機関に断られた、との相談です。

〇融資の借り入れを行ってすぐに返済猶予を求めることは、そもそも返済できないことがわかっていたのに借り入れを行ったのではないか、との疑念を生みます。返済できないことがわかっていて借り入れを起こす行為は、信義に反します。程度加減によっては法律に違反する犯罪行為になります。新規借り入れ直後の返済猶予は認められないケースがあります。

〇金融機関に対して返済猶予などの金融支援を依頼する時は、衡平でなければならないとするルール「衡平性の原則※」(=すべての金融機関に対して衡平に金融支援を受ける。)が適用されます。ある金融機関にのみ返済を続ける、このような例外は原則成立しません。この場合は、返済猶予依頼先の金融機関の同意が得られません。
このままでは、すべての借り入れに対してリスケジュールが出来ません。
※一部例外があります。

◎当事務所にて、状況の確認を行った結果、当該事象は、直近の借入後の予見不可能な緊急事態による急激な業績の悪化が原因であり、借入時においては予見が難しかった旨を、対象金融機関に丁寧に説明しました。一部担保(実質価値は小さい)を追加で提供して了解を得ました。(これも厳密に言うと「衡平性の原則」から外れますが。)
借入先の全金融機関からリスケジュールの承諾を得ることができました。
当事務所が、モニタリングを継続し、会社様のサポートと金融機関への窓口業務を担っています。

※銀行融資プランナー協会の正会員である当事務所は、クライアントに『お金の心配をできるだけしない経営を行ってもらう』ための新しい機能(=金融機関対応を含む財務の機能)を持つことを宣言いたします。
我々は、『税理士』ではなく、『新・税理士』です。
遠慮なくご相談ください。
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